採用活動において、従来の求人広告だけでは優秀な人材を確保することが難しくなっています。特に若い世代を中心に、SNSが日常的に使われる現代では、企業の採用活動にもSNSを活用する「SNS採用」が急速に広がっています。
東海ビジネスサービスの調査によると、2023年時点で約6割の企業がSNSを採用活動に活用しています。また、マイナビの調査では23年卒の新卒学生の62.7%がSNSでインターンシップや就職活動関連の情報を収集していたことがわかっています。
SNSを活用した採用支援は、低コストで広範囲にリーチでき、企業文化をリアルタイムで発信できる強力なツールです。しかし、「どのSNSを使えばいいのか」「何を発信すれば効果的なのか」と迷う採用担当者も多いのではないでしょうか。
この記事では、SNSを活用した採用支援の基本から実践的なノウハウ、成功事例まで徹底解説します。ぜひ最後までお読みいただき、自社の採用活動に役立ててください。
SNS採用とは?なぜ今注目されているのか
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)とは、InstagramやX(旧Twitter)、LINEなどのSNSを採用活動に取り入れる手法のことです。単なる求人情報の発信だけではなく、企業の魅力や社風を伝え、求職者と直接コミュニケーションを取りながら採用活動を進めていきます。
従来の採用方法は、求人サイトや人材紹介会社などを介して求職者を待つスタイルが一般的でした。一方、SNS採用は企業が求職者に直接アプローチする「ダイレクトリクルーティング」の一種と言えます。
SNS採用が注目される背景には、主に以下の2つの理由があります。
1. 採用競争の激化
少子高齢化が進行し、労働人口が減少している日本では、2014年以降「売り手市場」が続いています。求職者より求人数の方が多い状況で、企業は優秀な人材を確保するために一層の努力が必要になっています。
特に若年層や専門技術を持つ人材の獲得において、従来の採用方法だけでは競争に勝つのが難しくなってきました。SNSを活用することで、企業はターゲットとなる求職者に直接アプローチし、自由な表現方法で自社の魅力を伝えることができます。
2. SNS利用者数の増加と情報収集手段の変化
総務省の調査によると、日本のSNS利用者数は2022年時点で1億200万人、つまり総人口の80%以上が何らかのSNSを利用しています。特にZ世代(1990年代後半〜2010年代生まれ)のSNS利用時間は長く、10代平均で74分、20代平均で114分という結果が出ています。
求職者の情報収集手段も多様化しており、求人サイトだけでなく企業HP、就職口コミサイト、SNSなどさまざまな手段で情報を集めています。特に若い世代は、公式サイトの情報よりも実際に働いている人のリアルな声を求めてSNSをチェックするケースが増えています。
採用のメインターゲット層の情報収集手段がSNSである以上、採用活動においてSNSでの情報発信が重要になってくるのです。
SNS採用のメリット・デメリット
SNS採用を導入する前に、そのメリットとデメリットをしっかり理解しておきましょう。自社の状況に合わせて効果的に活用するためのポイントを解説します。
SNS採用のメリット
SNS採用には以下のようなメリットがあります。
- 低コストで広範囲にリーチできる:基本的に無料で始められ、拡散力を活かして多くの人にアプローチできます。
- 若年層や潜在的求職者へのアプローチが可能:特に若い世代は日常的にSNSを利用しているため、効果的にアプローチできます。
- 企業文化をリアルタイムで発信できる:社内の雰囲気やイベントなど、求人情報だけでは伝えきれない魅力を発信できます。
- 双方向コミュニケーションができる:求職者と直接やり取りすることで、距離を縮めることができます。
- 採用ブランディング効果がある:継続的な情報発信により、企業の認知度向上やブランディングにつながります。
SNS採用のデメリット
一方で、以下のようなデメリットも考慮する必要があります。
- 継続的な運用が必要:効果を出すには定期的な投稿や返信など、継続的な運用が欠かせません。
- 炎上リスクがある:不適切な投稿や対応によって炎上する可能性があります。
- 効果測定が難しい:直接的な採用につながったかどうかの因果関係を特定するのが難しい場合があります。
- 運用ノウハウが必要:効果的な運用には、SNSの特性を理解したノウハウが必要です。
デメリットを最小限に抑えるためには、運用ルールの策定や担当者の教育、投稿内容のチェック体制の構築などが重要です。また、効果測定の指標を事前に設定しておくことも大切です。
主なSNSの種類と採用への活用方法
SNSと一口に言っても、それぞれのプラットフォームには特徴があります。ターゲットとする層や目的に応じて、適切なSNSを選ぶことが成功の鍵となります。ここでは、採用活動で活用できる主なSNSの特徴と活用方法を紹介します。
Instagram(インスタグラム)
Instagramは20代〜30代の若い世代に人気のSNSです。写真や動画がメインとなるため、ビジュアルを重視したコンテンツが効果的です。
- 特徴:ビジュアル重視、ストーリーズやリール機能が充実
- 活用方法:社内の雰囲気、イベントの様子、社員インタビュー、オフィス環境の紹介など
- 向いている業種:デザイン、ファッション、飲食、小売など視覚的にアピールできる業種
ハッシュタグを活用することで、特定のキーワードに興味を持つユーザーにリーチすることも可能です。例えば、「#新卒採用」「#インターンシップ」などのハッシュタグをつけることで、就活生に見てもらいやすくなります。
X(旧Twitter)
Xは若い世代を中心に幅広い年齢層に利用されています。短文での投稿がメインで、リポストやいいね機能による拡散力が特徴です。
- 特徴:リアルタイム性、拡散力の高さ、短文での情報発信
- 活用方法:採用情報の告知、会社の日常、業界情報の発信、求職者との対話など
- 向いている業種:IT、メディア、スタートアップなど情報発信力を重視する業種
Facebook
Facebookは幅広い年代に利用されており、特に30代以上のビジネスパーソンの利用率が高いSNSです。文字数制限がないため、詳細な情報発信が可能です。
- 特徴:詳細な情報発信、イベント機能、コミュニティ形成
- 活用方法:企業の取り組み、社会貢献活動、採用イベントの告知など
- 向いている業種:B2B企業、大手企業、地域密着型企業など
企業ページを作成し、採用情報だけでなく会社の取り組みや職場の環境をアピールすることで、企業の魅力を総合的に伝えることができます。
LinkedInはビジネス特化型のSNSで、グローバルでは10億人以上のユーザーがいます。日本でも400万人を超えるユーザーがおり、特に専門職やグローバル人材の採用に効果的です。
- 特徴:ビジネス特化、職歴やスキルの共有、人脈形成
- 活用方法:専門職の採用、グローバル人材の獲得、企業の専門性アピールなど
- 向いている業種:IT、コンサルティング、金融、外資系企業など
職種や経験年数などで詳細に検索できるため、特定のスキルや経験を持つ人材を効率的に見つけることができます。
LINE
LINEは日本国内で8,900万人以上が利用する国民的メッセージアプリです。公式アカウントを通じて、直接的なコミュニケーションが可能です。
- 特徴:高いリーチ率、プッシュ通知、双方向コミュニケーション
- 活用方法:採用情報の配信、説明会の案内、個別相談など
- 向いている業種:小売、サービス業、アルバイト採用を行う企業など
ニトリの事例では、LINEを活用して採用活動を効率化し、応募者とのコミュニケーションを円滑に行っています。
SNS採用の導入ステップ
SNS採用を効果的に導入するためには、計画的に進めることが重要です。以下のステップに沿って進めていきましょう。
1. 目的とターゲットの明確化
まずは、SNS採用を通じて達成したい目的とターゲットを明確にします。新卒採用なのか中途採用なのか、どんな人材を獲得したいのかを具体的に定義しましょう。
例えば、「20代のエンジニアを増やしたい」「地元の学生に会社を知ってもらいたい」など、具体的な目標を設定することが大切です。目的やターゲットによって、使うべきSNSや発信すべき内容が変わってきます。
2. 適切なSNSの選定
ターゲットとなる層が多く利用しているSNSを選びましょう。先ほど紹介した各SNSの特徴を踏まえ、自社の目的に合ったプラットフォームを選定します。
複数のSNSを同時に始めるのではなく、まずは1〜2つのプラットフォームに絞って運用するのがおすすめです。運用リソースを分散させず、効果的な発信ができます。
3. コンテンツ戦略の策定
どのような内容をどのくらいの頻度で発信するのか、コンテンツ戦略を立てましょう。企業の魅力が伝わる内容を計画的に発信することが重要です。
- 発信内容の例:社員インタビュー、オフィスツアー、社内イベント、業務内容紹介、採用情報など
- 発信頻度:週1〜2回程度の定期的な投稿がおすすめ
- 投稿カレンダー:月単位で投稿内容を計画し、バランスの取れた発信を心がける
発信内容は、求職者が知りたいと思う情報を優先的に取り上げましょう。「どんな人が働いているのか」「どんな雰囲気で働くのか」など、求人情報だけでは伝わらない部分を重点的に発信することで効果が高まります。
4. 運用体制の構築
SNS運用を担当する人員を決め、役割分担を明確にしましょう。また、投稿内容のチェック体制や炎上時の対応フローなども事前に決めておくことが重要です。
可能であれば、SNSマーケティングの知識を持つ人材を配置するか、外部の専門家に相談することも検討しましょう。運用ルールを明文化し、担当者が変わっても一貫した運用ができるようにしておくことも大切です。
5. 効果測定と改善
定期的に効果を測定し、PDCAサイクルを回しながら改善していきましょう。フォロワー数やエンゲージメント率、採用サイトへの流入数など、目的に合った指標を設定して効果を測定します。
効果が出ている投稿の特徴を分析し、今後の投稿に活かしていくことで、より効果的なSNS運用が可能になります。
SNS採用の成功事例
実際にSNSを活用して採用活動に成功している企業の事例を紹介します。それぞれの企業がどのようにSNSを活用し、どのような成果を上げているのかを見ていきましょう。
Instagram活用事例:株式会社山善
BtoB企業である株式会社山善は、新卒採用のためにInstagramを活用しています。「#山善で働く人」というハッシュタグを使って、社員の日常や仕事の様子を発信しています。
特に注目すべきは、社員が自ら投稿する「社員リレー形式」の運用方法です。様々な部署の社員が交代で投稿することで、多角的な視点から会社の魅力を伝えることに成功しています。
この取り組みにより、BtoB企業でありながら学生からの認知度が向上し、応募者数の増加につながっています。
X(旧Twitter)活用事例:テレビ東京
テレビ東京は、X(旧Twitter)を活用した採用活動を行っています。「テレ東採用公式」というアカウントでは、採用情報だけでなく、社員の声や社内の様子、インターンシップの情報などをリアルタイムで発信しています。
特徴的なのは、テレビ局ならではの親しみやすく面白いツイートで、フォロワーの興味を引きつけている点です。また、就活生からの質問に積極的に回答するなど、双方向のコミュニケーションを大切にしています。
この取り組みにより、テレビ東京の社風や雰囲気が伝わり、「テレビ東京で働きたい」と思う学生の増加につながっています。
LINE活用事例:株式会社ニトリ
株式会社ニトリは、LINEを活用したアルバイト採用を行っています。LINE公式アカウントを通じて、採用情報の配信や応募受付、面接日程の調整などを一元管理しています。
応募者にとっては、普段使い慣れているLINEで簡単に応募や問い合わせができるメリットがあります。企業側も、応募者とのコミュニケーションを効率化できるメリットがあります。
この取り組みにより、応募のハードルが下がり、応募数の増加と採用業務の効率化を実現しています。
YouTube活用事例:DMMグループ
DMMグループは、YouTubeを活用した採用活動を行っています。「DMM.com Recruit」チャンネルでは、社員インタビューや会社紹介、オフィスツアーなどの動画を公開しています。
特に「1日密着」シリーズでは、様々な職種の社員の1日に密着し、実際の業務内容や働き方を詳しく紹介しています。これにより、入社後のミスマッチを防ぐ効果も期待できます。
動画というリッチなコンテンツを通じて、文字や写真だけでは伝わりにくい会社の雰囲気や仕事内容を効果的に伝えることに成功しています。
SNS採用成功のポイント
SNS採用を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、SNS採用を効果的に進めるための3つのポイントを紹介します。
1. ターゲットを明確にしてペルソナを作成する
SNS採用を成功させるためには、まずターゲットを明確にし、詳細なペルソナを作成することが重要です。「20代前半の理系大学生」「30代のエンジニア経験者」など、具体的に採用したい人物像を設定しましょう。
ペルソナが明確になれば、その人物がどのSNSを利用しているか、どんな情報に興味を持つかなどが見えてきます。それに基づいて、適切なSNSプラットフォームの選定や発信内容の検討ができます。
例えば、若手エンジニアをターゲットにするなら、技術的な話題や開発環境、エンジニアの働き方などを発信することで興味を引くことができるでしょう。
2. 情報発信の目的に合わせたコンテンツを企画する
SNSでの情報発信には、「認知拡大」「興味喚起」「応募促進」など様々な目的があります。目的に合わせたコンテンツを企画することが大切です。
- 認知拡大:企業の存在や事業内容を知ってもらうためのコンテンツ
- 興味喚起:企業の魅力や社風、働く環境を伝えるコンテンツ
- 応募促進:具体的な求人情報や応募方法を伝えるコンテンツ
これらをバランスよく発信することで、求職者の行動を段階的に促していくことができます。また、各SNSの特性を活かしたコンテンツ作りも重要です。例えば、Instagramでは視覚的に魅力的な写真や動画、Xでは簡潔で伝わりやすいメッセージなど、プラットフォームに合わせた発信を心がけましょう。
あなたは自社の魅力を伝えるために、どんなストーリーを語れますか?
3. 継続的に発信する
SNS採用で最も重要なのは、継続的な情報発信です。一時的な盛り上がりではなく、長期的な視点で運用することが成功の鍵となります。
定期的な投稿スケジュールを立て、計画的に情報を発信しましょう。週1〜2回程度の投稿頻度を維持することで、フォロワーとの関係性を築くことができます。
また、単に投稿するだけでなく、コメントやメッセージに返信するなど、双方向のコミュニケーションを大切にしましょう。求職者からの質問に丁寧に答えることで、企業への親近感や信頼感が高まります。
継続的な運用のためには、社内の協力体制を構築することも重要です。担当者一人に負担が集中しないよう、複数人で役割分担するなど、持続可能な運用体制を整えましょう。
SNSを活用した採用支援サービスの活用
自社でSNS運用のノウハウがない場合や、リソースが限られている場合は、SNSを活用した採用支援サービスの利用も検討してみましょう。ここでは、SNS採用支援サービスの種類や選び方について解説します。
SNS採用支援サービスの種類
SNS採用を支援するサービスには、主に以下のような種類があります。
- SNSアカウント運用代行:企業に代わってSNSアカウントの運用を行うサービス
- SNS広告運用支援:SNS広告の企画・制作・運用を支援するサービス
- コンテンツ制作支援:投稿用の写真・動画・テキストなどのコンテンツ制作を支援するサービス
- 採用ブランディング支援:SNSを活用した採用ブランディング戦略の策定・実行を支援するサービス
自社の課題や目的に合わせて、適切なサービスを選ぶことが重要です。
SNS採用支援サービスの選び方
SNS採用支援サービスを選ぶ際は、以下のポイントを確認しましょう。
- 実績:類似業界や規模の企業での支援実績があるか
- 専門性:SNSマーケティングと採用活動の両方に精通しているか
- 提供サービスの範囲:戦略策定から実行、効果測定までトータルでサポートしてくれるか
- コミュニケーション:担当者との相性や連携のしやすさ
- 費用対効果:予算に見合ったサービス内容か
複数のサービスを比較検討し、自社に最適なパートナーを見つけることが大切です。
SNS採用は今や企業の採用戦略において欠かせない要素となっています。自社の魅力を効果的に伝え、優秀な人材を獲得するために、ぜひSNSを活用してみてください。
【まとめ】
SNSを活用した採用支援で採用活動に変化を起こそう!
SNSを活用した採用支援は、従来の求人広告だけでは届かなかった層にアプローチし、企業の魅力をリアルに伝えることができる強力なツールです。本記事でご紹介したポイントをおさえて、効果的なSNS採用を実践してみましょう。
- SNS採用は、低コストで広範囲にリーチでき、企業文化をリアルタイムで発信できる
- Instagram、X、Facebook、LinkedIn、LINEなど、目的やターゲットに合わせて適切なSNSを選ぶ
- 目的とターゲットを明確にし、計画的なコンテンツ戦略を立てて継続的に発信する
- 成功事例を参考に、自社に合ったSNS活用方法を見つける
- 必要に応じて、SNS採用支援サービスを活用する
SNS採用は即効性のある施策ではなく、長期的な視点で取り組むことが重要です。継続的な情報発信と双方向のコミュニケーションを通じて、求職者との信頼関係を築いていきましょう。
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